ゴー第4回映画館大賞

今改めて見ると本当にムチャクチャな映画です. でもどんなに時代が変わっても面白いものは面白いと言える映画の一本でもあると思います. 昨今20年ぶりに新作が製作されるかも? という噂もあるこのシリーズですが、VFXが立派になったこの21世紀に製作されるともっと面白くなるかも知れませんね. 幽霊話がたくさんある日本とは違い、お清めの塩も聖水も使わず、さすが科学の国アメリカと言わんばかりに大した説明もなく電気系統の機械でオバケを捕まえることができると言い放つOPからいろんな意味凄いです. 多分昨今の映画なら小難しい科学用語も混ぜつつ、5分くらいの簡単な説明が入るでしょう. けどそんな説明などコメディに必要あるか! とまでは行きませんが、とにかく多少強引と思えるほど細かいことを一切気にせずに進むストーリーはある意味潔いですけど、いろんな意味でムチャクチャです. そしてムチャクチャなのはオバケ退治方法だけでなくこのゴーストバスターズの面々も同じ. だって初めての仕事で散々っぱらホテルの宴会場を破壊しておきながら、オバケ退治料金で4000ドル、オバケ捕獲管理費で1000ドルを請求するんですよ. 当時為替相場を仮に1ドル=120円としたら、なんと計60万円. しかもホテル側が「高い! 」とケチをつけたら、「捕まえたオバケを元に戻すだけ」と半ば脅すような強引さ. 結構あくどい商売してますなぁ~と思っちゃいますよ. さらにもっと驚いたのは初めて仕事の依頼にきたシガニー・ウィーヴァー演じる女性宅にビル・マーレー演じるヴェングマンが調査に行ったくだり. 何とまぁ、ここでヴェングマンは仕事もせずに顧客候補を口説きに掛かるんですよね. こんなこと今の時代にやったら裁判モノですよ. それができちゃうのもこの時代の空気なのか、それともそんな細かいことさえ考えずにこの映画が作られているのか. そうそう、裁判モノといえば環境局の役人が捜査令状を見せずにゴーストバスターズの事務所に家宅捜索に入るのも今の時代なら問題になるでしょうね. そしてこの映画での一番の驚き. それはラストでマシュマロマンが消滅した後のくだりです. このマシュマロマンをゴーストバスターズが間接的に生み出していたというのも驚きだったのですが、なんとこのマシュマロマンをゴーストバスターズが消滅させたあと、NY市民が女性も含めて溶けたマシュマロでベットリな状態になるんですよね. 個人的にマシュマロマンと聞くと西村知美さんの結婚会見を思い出すのですが、そんなことが頭の片隅にある状態でこの映像を大人の男性が見たら、多分半分くらいの方はちょっとドキッ! とすると思います. だってとある業界では溶けたマシュマロを浴びるということは性的な意味を持たせることでもあるんですもん. これも今の時代ならNGを食らうかも知れませんよ. とまぁ、こんな感じなのも1980年代だから許されたのか、それともこの映画の雰囲気が許したのか、とにかく今改めて見ると本当にいろんな意味で凄い映画でした. そしてそんなゴーストバスターズを率いてNYからオバケを追い出すビル・マーレールーシー・リューによって 『チャーリーズ・エンジェル』 から追い出されているんですよね. 多分ビル・マーレーも心のどこかでルーシー・リューバスターズを作りたかったんでしょうね. 深夜らじお@の映画館 はオバケと聞けばQ太郎を思い出す世代です.

全国の映画館スタッフが2011年で最も面白い映画を選ぶ、第4回映画館大賞の結果が発表されていました. 結果はイカの通りでゲソ. 1 『ブラック・スワン』 2 『英国王のスピーチ』 3 『冷たい熱帯魚』 4『大鹿村騒動記』 5 『八日目の蝉』 6 『キック・アス』 7 『ソーシャル・ネットワーク』 8『ステキな金縛り』 9『ゴーストライター』 10 『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』 11 『モテキ』 12『海炭市叙景』 13『一枚のハガキ』 14 『猿の惑星: 創世記』 15 『ブルーバレンタイン』 16 『未来を生きる君たちへ』 17 『コクリコ坂から』 18『バーレスク』 19『サウダーヂ』 20 『ハリー・ポッターと死の秘宝Part2』 20『ブンミおじさんの森』 上位3本に関しては映画好きが選ぶどのランキングでも高く評価されている作品が並んできましたが、注目すべきなのは上位21本の中にミニシアター系作品が凄く多いということ. 例えば『海炭市叙景』 『ブルーバレンタイン』 『サウダーヂ』『ブンミおじさんの森』なんて、某情報誌Pなどの普通の映画ランキグではほぼ挙がってこない作品ばかり. でもだからこそ、映画会社や配給会社に気を遣う大手シネコンとは違い、純粋に面白い映画を選んでくれるミニシアター系の映画館スタッフが自身を持って推している作品でもあると思えるんですよね. 昨今、大ヒットする有名作品ばかりにスポットを当て、ちょっと話題になった小品があると素人相手に映画通ぶる雑誌やTV番組が多い中、こういうランキングは来年以降も是非続けてほしいです. でないと、昨年見逃した面白い映画が何なのかを知る場がなくなってしまいますからね. 深夜らじお@の映画館 にとってABCアシッド映画館シネマグランプリ無き今、こういうランキングは凄く貴重な存在です. ※お知らせとお願い ■ 【元町映画館】 に行こう. 僕はどこにいるんだろ? 深い森を彷徨うように深い心の奥底で彷徨っていたワタナベがこの言葉に辿り着いたとき、彼が感じた幸せとはいったいどんなものだったのでしょうか. 現代文学界最高峰とまで賞賛された村上春樹先生の原作を『青いパパイヤの香り』のトラン・アン・ユン監督が映画化したこの作品は、映像とストーリーと言葉の美しさが見事なアンサンブルを醸し出した稀有な秀作だと思います. まずこの映画で特筆すべきなのは映像、特に草木などの緑の美しさ. 『夏至』のような深緑でも 『殯の森』 のような日本の緑でもなく、黄緑色なのに深みがあって、世界中の誰が見ても心を落ち着かせるような、でも深い魅力にハマっていくような、そんな独特の美しさがあるんです. そんな美しい映像と共に進む親友キズキを自殺で失い、直子とミドリという対照的な2人の女性の間で彷徨うワタナベの心の物語もまた、口語っぽくないけれどなぜかオシャレでアカデミックに感じる美しい言葉たちのおかげか、凄く美しく感じること. 別に『Love letter』みたいに硝子細工のような映像でもストーリーでもないのですが、一歩間違えれば退屈に感じるところを一歩も間違えずに全てが美しい映画に仕上がっていることもあってか、ゆっくりと作品の深みへと誘われていくのが凄く心地いいのです. 特に話題になっていたベッドシーンも直子の息遣いや喘ぎ方など凄くリアルなのに全然いやらしさを感じないんです. むしろワタナベと直子の「繋がっていたい」という気持ちだけがスクリーンに映っていて、勃起による気持ち良さよりも絶頂後に女性に頭を抱いてもらった時のあの安心感が感じられるんです. また京都の療養所を訪れたワタナベが転寝から覚めて直子と言葉を交わすシーンで2人の表情と心境を光と影だけで描く演出も素晴らしく、個人的にはこのシーンを見れただけでも十分と思えるほどでしたよ. そしてこの映画で、いやこの作品で最も素晴らしいのは「人が幸せを追い求める姿」というのを見事に描き出していること. 自殺したキズキを求めるように早歩きになる直子、哲学的思想と女遊びで自分の居場所を探す永沢、永沢への想いをワタナベに怒りとしてぶつけるハツミ、妄想と現実の間でワタナベへの興味を愛へと変化させるミドリ、直子を失った喪失感をワタナベの体と旭川で埋めようとするレイコ、そして肌寒さを感じる時に直子を想い、ミドリと会話する時も直子のことを心配し、でもミドリの「生きることを選択した」温かみを知ったワタナベ. 正義を求め学生運動に明け暮れた学生も、体を重ねることに青春を費やした若者たちもみんな自分が幸せになるために心の奥底にある自我の森で彷徨いながらただ辿り着く場所を求めていただけ. 「僕はどこにいるんだろ? 」 幸せを求め彷徨っていたワタナベがふと立ち止まった時、彼が電話越しに感じたミドリの「歳を取らなくなった死者に対して生きることを選択した」温かみ. 「孤独を好む人なんていないよ」 ワタナベには今、帰るべき場所がある. 「大切な人を失った時の悲しみから人は何かを学ぶものの、それは次に来る悲しみに対しては何の役にも立たない」 人は誰しも悲しみに対抗できない弱い存在. でもそれに決して屈することなく幸せを求め続ける強さを知ることができる. 永遠に17歳のキズキと永遠に21歳の直子を忘れることなく、でも生きる選択をしたワタナベのこれからの人生にも美しさを感じる素晴らしい映画でした. 深夜らじお@の映画館 は直子派なのでこのポスターを選びました. ※お知らせとお願い ■ 【元町映画館】 に行こう! ■ 【シネマグランプリ】 受付は12/23まで.